カロス(COROS)から2026年9月のアップデートが来た。発表は2026年9月4日だ。
今回は海外のレビュワーが一斉に騒いだ。理由ははっきりしている。36,300円のペース4(PACE 4)に、オフラインのマップが載る。これまで地図が見られたのはペースプロやエイペックス4といった上位機だけだった。それが、いま自分の手首にある一番安いモデルに降りてくる。
ただ、今回のアップデートには2階建ての構造がある。ここを分けずに読むと混乱する。
私は通常版を入れた。マップだけ入れていない。この記事では、その理由を書く。ペース4での検証だ。


まず結論|入れたもの、入れなかったもの
| 中身 | 私の状態 | |
|---|---|---|
| 通常アップデート | バッテリー使用状況/アドベンチャージャーナル/ダイレクトトランスファー/ボイスコントロール拡張 ほか | ✅ 入れた |
| マップ(パブリックベータ) | ペース4のオフライン地図 | ❌ 入れていない |
ここが今回のポイントだ。マップは通常のアップデートでは降りてこない。カロスのサポートサイトからパブリックベータに参加して、はじめて手に入る。
つまり「アップデートしたのに地図が出ない」は正常である。ここを勘違いしている人が出そうなので、先に書いておく。

私の検証環境はこれだ。ソフトウェア v3.1908.0、ハードウェア v1.50、アプリは V4.9.8。この状態で、以下は全部実機で確認している。
2026年9月アップデートで何が変わったのか
まず全体像から。公式の発表を整理すると、こうなる。
| 機能 | 中身 | 配布 |
|---|---|---|
| ペース4のグローバルマップ | 街路名・トレイル名・POI(施設情報)入りのオフライン地図 | ベータ |
| アドベンチャージャーナル | 活動履歴がタイムライン表示に。前後に撮った写真・動画を後付けでき、共有リンクも作れる | 通常 |
| バッテリー使用状況 | 今日の消費量と推移がウィジェットで見られる | 通常 |
| ダイレクトトランスファー | ファームウェア更新が速くなり、更新中もアプリを操作できる | 通常 |
| ボイスコントロール拡張 | 走行中にアラート変更・ナビ起動・タイマー設定ができる | 通常 |
| クライムアラート | 登りの開始と終了を通知。残り獲得標高もリアルタイム表示 | バイクモードのみ |
| トルク/トータルワーク(kJ) | パワー系の新指標 | バイク |
| 左右パワーバランスの外部連携 | サードパーティへ同期 | バイク |
| インポートしたルートの標高精度改善 | GPXなどを取り込んだときの標高 | 通常 |
一覧にして、気づいたことがある。
ランニングの計測指標が、今回はひとつも増えていない。接地時間もランニングパワーも評価ロジックも、すべて据え置きだ。増えたのはバイク向けの指標と、ナビゲーション系。9月は「トレイルと自転車の月」だったと言っていい。
前回の8月は違った。あのときは「その他」の欄に紛れていたCOROS MCPが本命で、時計のデータをAIに直接読ませられるようになった。あれと比べると、今回はランナーへの直撃弾がない。
通常版で増えたもの|実機で確認した2つ
ベータを入れなくても手に入るものから見ていく。
バッテリー使用状況ウィジェット

これは分かりやすい。ウィジェットに「現在のバッテリー」と「本日の使用量」が並び、下に推移のグラフが出る。
撮影時は残り67%で、その日の消費が1%だった。走っていない日は1日1%しか減らないということが、はじめて数字で見えた。
地味だが、これは効く。ペース4の売りは19日間の駆動時間だが、「何をすると何%減るのか」はこれまで感覚でしか分からなかった。マップを入れたら消費がどう変わるかも、この画面で追える。ベータを入れるかどうかを判断する材料そのものになる。
アドベンチャージャーナル|入口が分かりにくい

アプリの活動履歴が、時系列に並ぶタイムライン表示になった。
ただ、入口がとにかく分かりにくい。メニューのどこにも「ジャーナル」という項目はない。活動の詳細画面を開いて、右側に縦に並んでいるアイコンの一つ——共有ボタンとレイヤーボタンの下——が入口だ。上の写真で示した位置になる。

開くとこうなる。走行中のデータと、前後に撮った写真が同じ時間軸に並ぶ。
スタート地点で撮った1枚が「0.00km」の位置に、ゴールの1枚がその先に入る。「その日、何が起きたか」がひとつの画面で追えるようになった。ブログに書く前の整理として、これは使える。
目玉はペース4のグローバルマップ|ただしベータだ
ここからが本題だ。
いまのペース4のナビは「線だけ」だ
ペース4にもナビゲーション機能は最初から入っている。GPXファイルを取り込めば、時計の画面にルートが線で表示され、その上を自分の点が動く。いわゆるブレッドクラム(パンくず)方式だ。
実際の画面がこれになる。

線の下は、真っ黒である。道も、川も、建物も、何ひとつない。
拡大しても同じだ。

200mスケールまで寄せてみたが、出てくるのは目盛りのグリッドだけだった。自分がルートから外れたとき、「どっちに戻ればいいのか」を教えてくれる情報がゼロということだ。
今回のアップデートで、この黒い画面に地図が敷かれる。街路名、トレイル名、施設情報、そして等高線を含む地形図。ペースプロと同じ地図が、そのまま降りてくる。
この2枚は、いま持っている人にしか撮れない写真だ。正式版が降りてきたら、二度と撮れなくなる。
ノンルータブル|時計だけでルートは作れない
ここは正確に書いておきたい。ペース4のマップは「ノンルータブル」だ。
平たく言えば、地図は”見るだけ”。時計に向かって「ここから駅まで道を出して」と頼むことはできない。道を外れたときの自動リルートもない。地図はあくまで、ルートの下に敷かれる背景である。
ルートを作るのは事前に、カロスのアプリかストラバのルート機能、あるいはコモート(Komoot)で。「地図が見られる」と「ナビしてくれる」は別物なので、ここを勘違いすると落胆する。
4GBという壁|日本全図は入らない
ペース4の内蔵ストレージは4GBしかない。上位機のような大盤振る舞いはできない。
海外レビューが挙げていた実サイズの目安がこれだ。しかも実機では、地図以外の「その他」データですでに約2.3GB使われていたという報告もある。残りは1.7GB前後だ。

州単位で200〜300MB台なら、北海道だけ入れておく分にはまったく問題ない。遠征先を1〜2箇所足すのも現実的だ。ただし「日本全部を常に持ち歩く」のは無理がある。行く場所を選んで入れる運用になる。
入れ方はパブリックベータへの参加
現時点でマップはパブリックベータとして配布されている。カロスのサポートサイトからベータプログラムに参加すると降りてくる仕組みだ。
つまり、まだ正式版ではない。実際、海外のレビューでも「ペースプロと比べて地図の回転の追従が遅れる場面がある」と指摘されている。ベータ期間中に改善される見込みだが、いまの時点では未完成のソフトを自分の時計に入れることになる。
ガーミンとの価格差|地図つき36,300円という異常値
今回これだけ騒がれた理由は、結局のところ値段だ。

| モデル | 価格(税込) | フルカラーマップ |
|---|---|---|
| カロス ペース4 | 36,300円 | ○(今回のアップデート) |
| ガーミン フォアランナー570 | 89,800円 | ×(搭載なし) |
| ガーミン フォアランナー970 | 121,800円 | ○ |
ガーミンで地図を手に入れようとすると、いまのところフォアランナー970クラス、12万円台まで上がる。その手前の570(89,800円)にはフルカラーマップは載っていない。
36,300円と121,800円。同じ「地図が見られる時計」でこの差だ。
もちろん中身は違う。ガーミンの地図は国土地理院の地形図がベースで、ルート提案までやってくれる。ペース4のマップは見るだけだ。同じ土俵ではない。それでも、「地図を出す」という一点だけを見れば、3分の1以下の値段で足りることになった。
ペース4を選んだ理由については別記事に書いたが、「削られているのは地図とスピーカーだけ」というのが当時の私の評価だった。その削られていた片方が、後から無料で戻ってきた形になる。

ランナー向けの新指標は、今回ゼロだった
冷静に見ておきたい。
ロードを走るだけの人間にとって、9月アップデートの実利はほぼない。
- クライムアラートはバイク専用。ロードの登りでは鳴らない
- トルクもトータルワークも自転車の指標
- ボイスコントロールの拡張は、走りながら使う場面が正直思いつかない
- アドベンチャージャーナルは、活動履歴の見た目の話
そしてマップ。毎週同じコースを走っている人間に、地図は要らない。私が普段走るのは自宅周辺と豊平川沿いで、あそこで道に迷うことはない。
地図が効くのは、「知らない場所を、決まった道から外れて走る」ときだ。つまりトレイルである。藻岩山を走ったときは、分岐でスマホを出して確認した場面が何度かあった。あれが手首で済むなら価値がある。

ロードのレースを目標にしている人にとっては、今回は見送りで問題ない。
それでも、自分に効きそうなものが2つある
全否定するつもりはない。使い道は見えている。
①知らない土地で走るとき
出張先や遠征先で走ることがある。旅ランだ。あれは毎回、走る前にスマホで地図を眺めて、頭に入れてから出る。それでも曲がる場所を間違える。
ルートを外れたときに「戻る道がどれか」がその場で分かるのは、スマホを取り出す手間ひとつぶん違う。ここはマップが効く場面だ。

②インポートしたルートの標高精度
こちらは地味だが、私には本命かもしれない。
「インポートしたルートの標高精度を改善」——これは、GPXを取り込んだときに時計が表示する高低差の話だ。
コース攻略の記事を書くとき、高低差は必ず調べる。ところが情報源によって数字が食い違うことがあり、実際に「48mと81m」でぶつかったことがある。取り込んだルートの標高がまともになるなら、この手の食い違いはひとつ減る。
結論|レースが近い人は、マップを待て
ここが今回いちばん書きたかったことだ。
通常版は入れていい。バッテリーウィジェットもジャーナルも、入れて困るものではない。実際、私は入れた。
問題はマップのベータのほうだ。海外レビューでも同じことが書かれていた。大きなレースの直前に、新しいソフトウェアを入れるべきではない。
理由は単純だ。
- マップ表示はバッテリーを食う。ペース4の長時間駆動は最大の武器だが、その前提が変わる可能性がある
- ベータは未完成である。地図の描画が重いという報告が現時点で出ている
- 得るものが、失うかもしれないものに見合わない。レース当日、地図は一度も見ない
私は10月にハーフのレースがあり、11月にもう一本ある。この2つが終わるまで、レースで使う時計にベータは入れない。
入れていいのは、こういう人だ。
- 直近1〜2ヶ月にレースの予定がない
- トレイルを走る、または知らない土地で走る機会がある
- 不具合が出たら自分で切り分けて報告できる
逆に、秋のレースに向けて仕上げている最中の人は、正式版を待てばいい。マップは逃げない。
私がマップを入れるのは、11月2日だ
シーズンが終わってからにする。冬の札幌は雪でコースが読めなくなるし、来年トレイルに出るなら、その前に慣れておきたい。急ぐ理由がひとつもない。
それでも、この一件で分かったことがある。
カロスは、売ったあとの時計を置いていかない。5月も6月も8月も、そして今回も、買った時計に機能が増え続けている。8月にはAI連携が来て、9月には地図が来た。36,300円で買ったものの中身が、半年で別物になっている。
正式版が降りてきたら、実機で試して追記する。
まとめ
- 9月アップデートは2階建て。通常版とマップのベータは別物で、アップデートしても地図は出ない
- 通常版で増えたのはバッテリー使用状況ウィジェットとアドベンチャージャーナル(入口は活動詳細の右側アイコン)
- マップはノンルータブル。見るだけで、時計上のルート作成・リルートはできない
- 内蔵4GBのため入れる地域を選ぶ運用になる。北海道だけなら余裕がある
- 地図つきで36,300円は、ガーミンの121,800円と比べると破格
- ランニングの計測指標は今回ゼロ。増えたのはバイク向けとナビ系
- レースが近い人はマップを待て。私は11月2日まで待つ


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