マラソンの心拍管理|練習で閾値を体に刻み、レース序盤の暴走を止める【40代ランナーのCOROS実測】

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マラソンの心拍管理 アイキャッチ

「ペースは守れているのに、なぜか後半でガクッと落ちる」

サブ80(ハーフ1時間20分切り)を目指して練習を重ねるなかで、ぼくがいちばん苦しんだのがこれだった。設定ペースは時計で見られる。でも身体が実際にどれだけ無理をしているかは、ペースには映らない。それを映すのが心拍だ。

COROS Pace4 を使い始めて、ぼくの走りは「ペースで管理する」から「心拍で管理する」へと大きく変わった。この記事では、ぼく自身のCOROS実測データ(最大心拍192bpm・閾値173bpmなど)を全部公開しながら、練習でどう心拍をコントロールし、レース本番で序盤の暴走をどう止めるかを、正直に書いていく。

この記事でわかること
  1. ペース管理だけでは後半に失速する理由
  2. 自分の心拍ゾーンの知り方(COROS実測データを公開)
  3. 練習種目ごとに狙うべき心拍ゾーン
  4. レース序盤の心拍暴走を止める具体策
  5. 今日から始める3ステップ
目次

なぜ「ペース管理」だけでは後半に失速するのか

ペースは結果であって、身体の負担そのものではない。同じ「4分00秒/km」でも、気温が高い日、睡眠不足の日、スタート直後で興奮している日では、身体が支払っているコストはまったく違う。その「コスト」を数値で見せてくれるのが心拍だ。

ぼくは実際にこれで失敗している。あるテンポ走で、設定ペース3分58秒/kmはきっちり守れた。タイムだけ見れば合格だ。ところがCOROSのデータを見ると、テンポ区間の平均心拍は173bpm——後述するが、これはぼくの「閾値心拍」のド真ん中で、テンポ走としては明らかに追い込みすぎだった。ペースという物差しだけ見ていたら「うまくいった練習」で終わっていた。心拍という物差しがあったから「やりすぎ」に気づけた。

レース本番でも同じことが起きる。スタートのアドレナリンで、同じペースでも心拍は普段より10〜15bpm跳ね上がる。序盤の「いけるじゃん」は、たいてい心拍が嘘をついている。ペースで突っ込んだツケは、必ず後半に心拍の天井という形で回収される。

まず自分の心拍を知る(COROS実測データを公開)

心拍管理は「自分の数字を知ること」から始まる。借り物の一般論では意味がない。以下はCOROS Training Hubが算出した、ぼく自身の実測値だ。

項目数値意味
最大心拍192bpmインターバルで実際に到達した上限
安静時心拍50bpm持久力ベースの指標。低いほど心臓が効率的
閾値心拍173bpmこれ以上は急速に疲労する“境界線”
閾値ペース3分53秒/km閾値心拍に対応する走行ペース

ちなみに40代で安静時心拍50bpmは、我ながら悪くない数字だ。何年も走り続けて、心臓が「1回でたくさん血を送れる」状態に育った結果だと思っている。

COROSが算出したぼくの心拍ゾーン(6段階)

ゾーン心拍範囲最大心拍比使う練習
リカバリー〜137bpm〜71%回復ジョグ・ウォームアップ
有酸素持久138〜156bpm72〜81%LSD・ロング走の土台づくり
有酸素パワー157〜164bpm82〜85%やや速いジョグ・距離走の後半
乳酸閾値165〜176bpm86〜92%テンポ走・閾値走
無酸素持久力177〜183bpm92〜95%インターバルの主要区間
無酸素パワー184bpm〜96%〜全力疾走・ラストスパート

右の「最大心拍比」は、ぼくの最大心拍192bpmから逆算した目安だ。自分の最大心拍にこの%を掛ければ、そのまま自分用のゾーンに置き換えられる。たとえば最大心拍が185bpmの人なら、有酸素持久ゾーン(72〜81%)はおよそ133〜150bpm。bpmの絶対値は人それぞれでも、「最大心拍の何%か」で考えれば誰でも同じ物差しが使える。

COROSが算出した心拍ゾーン(最大192bpm・閾値173bpm・安静50bpm)
COROS Training Hubが算出した、ぼく自身の実際の心拍ゾーン。最大192bpm・閾値173bpm・安静時50bpmを基に6段階で表示されている

数字は人によって違う。最大心拍は「220−年齢」の概算ではなく、インターバルやレースで実際に出た最高値を使うのが正確だ。COROSやGarminなどのGPSウォッチがあれば、何度か追い込む練習をするうちに自動で更新されていく。

【練習編】心拍で練習強度をコントロールする

練習の目的は種目ごとに違う。そして目的が違えば、狙うべき心拍ゾーンも違う。ペースだけ合わせても、心拍ゾーンがずれていれば狙った効果は出ない。ぼくの実走データで具体的に見ていく。

ロング走・LSD → 有酸素持久ゾーン(138〜156bpm)

ロング走の目的はスピードを出すことではなく、有酸素能力の土台を積み上げることだ。実際、ある27kmのロング走で、ぼくは平均ペース4分48秒/kmに対して平均心拍150bpm——有酸素持久ゾーンのど真ん中で2時間以上動き続けられた。向かい風でペースは落ちたが、心拍は適正だったので「身体の仕事量は管理できていた」と判断できた。風の日や暑い日は、ペースを捨てて心拍で走る。これがロング走の鉄則だ。

テンポ走・閾値走 → 乳酸閾値ゾーン(165〜176bpm)

テンポ走は「閾値ペースを身体に覚えさせる」練習だ。ぼくの閾値心拍は173bpm。冒頭で書いた失敗は、ここを狙わずに踏んでしまったケースだ。173bpmはゾーンの上限寄りで、テンポ走としては「ギリギリ攻めすぎ」。狙うなら165〜170bpmあたりで気持ちよく刻むのが正解で、心拍が175bpmを超えてきたら一段ペースを落とす——この判断が心拍計なしではできない。

インターバル → 無酸素ゾーン(177bpm〜)、ただし狙って

インターバルはあえて心拍を上限まで追い込む練習だ。ぼくの最大心拍192bpmはこの種目で記録した。ここでのポイントは「疾走区間で上げ切り、レスト区間でしっかり戻す」こと。レストで心拍が下がりきらないなら、本数か強度が過剰のサインだ。ここでも心拍が「やめどき」を教えてくれる。

練習種目狙う心拍ゾーンぼくの実測例
回復ジョグ〜137bpm
ロング走・LSD138〜156bpm27km / 150bpm
テンポ走・閾値走165〜176bpm7.5km / 173bpm(攻めすぎた例)
インターバル177〜192bpm最大192bpm到達

【レース編】序盤の心拍暴走を、どう止めるか

練習で各ゾーンの「体感」を覚えたら、それを本番で使う。レースでいちばん難しいのが序盤の心拍コントロールだ。

走りながらGPSウォッチで心拍を確認する40代ランナー
レース中はペースだけでなく心拍をこまめに確認する。序盤の暴走はたいてい心拍に先に表れる

スタートのアドレナリンで心拍は10〜15bpm上振れする

号砲が鳴った瞬間、周りのペースに引っ張られ、アドレナリンも出る。同じペースでも心拍は普段より10〜15bpm高く出る。ここで「いつもより楽だから」とペースを上げると、気づかぬうちに閾値を超えていて、後半に心拍の天井に張り付いて失速する。ぼくが大会で何度もやらかしたパターンだ。

処方箋:最初の3kmは「物足りない」で正解

  • 最初の3kmは意図的に目標ペースより心拍を5〜10bpm低く抑える。「物足りない」と感じるくらいでちょうどいい
  • ウォッチの心拍を1kmごとにチラ見する。ペースより心拍を優先して確認する
  • 心拍上限アラートを設定しておく。たとえば「178bpm超でバイブ」にしておけば、興奮で突っ込んでも身体が気づく前に時計が止めてくれる
  • 中盤(レース距離の4〜7割)で閾値心拍まで上げ、ラストでゾーンを振り切る。心拍の“貯金”を後半に回すイメージ

サブ80の目標ペースは3分48秒/km前後だが、序盤はあえて閾値心拍173bpmに対して余白を残して入る。前半で心拍を温存できた日ほど、後半のペースが崩れない。これは練習で心拍ゾーンの体感を積んでいないと、絶対にできない判断だ。だから練習編と本番は地続きなのだ。

心拍管理を始める3ステップ(これから始める人へ)

難しく考える必要はない。順番にやれば誰でも始められる。

  • STEP1:最大心拍と安静時心拍を知る。GPSウォッチを着けてインターバルやレースで追い込めば最大心拍が、毎日(睡眠時も)着けておけば安静時心拍が分かる
  • STEP2:心拍ゾーンを設定する。COROSやGarminは最大心拍を入れれば自動でゾーンを作ってくれる
  • STEP3:練習でゾーンの“体感”を覚える。「このきつさが閾値か」と身体に紐づけていく。これが本番の武器になる
GPSウォッチがあると、心拍管理はこう変わる
  • ペース・心拍・ケイデンスを一度にまとめて記録できる
  • 走りながら今いる心拍ゾーンをリアルタイムで確認できる
  • 追い込むほど最大心拍が実測で自動更新され、ゾーンの精度が上がる
  • 練習後にデータを振り返り、「やりすぎ/物足りない」を数値で判断できる

心拍管理は、ランニングウォッチがあって初めて成立する。サブ80を本気で目指すなら、最初に揃えたい一台だ。

心拍管理のよくある質問

Q. 心拍計は何を使えばいい?手首の光学式と胸ベルト、どっちが正確?

結論から言うと、普段のジョグやロング走は手首の光学式(GPSウォッチ内蔵)で十分だ。ぼくもCOROS Pace4の光学式をメインに使っている。ただし、インターバルのように心拍が急上昇・急降下する練習では、手首式は反応が一瞬遅れたり、腕の振りで値が暴れたりすることがある。1拍単位の正確さがほしいインターバルや、データを真剣に分析したいときは胸ベルト式が一枚上手だ。まずは手持ちのGPSウォッチで始めて、物足りなくなったら胸ベルトを足す、で十分間に合う。

Q. 同じペースなのに、日によって心拍が違うのはなぜ?

心拍は体調と環境にとても素直に反応するからだ。気温が高い・睡眠不足・脱水・カフェイン・前日の疲労——これらが重なると、同じペースでも簡単に5〜15bpm跳ね上がる。実際ぼくも、夏の暑い日のテンポ走では涼しい日より5〜10拍高く出る。だから心拍は「絶対値」で一喜一憂するより、「いつもの自分と比べて高いか低いか」で見るのが正解だ。いつもより明らかに高い日は、体が疲れているサインだと思っていい。

Q. 最大心拍は「220−年齢」で出しちゃダメ?

あくまで目安としては使えるが、個人差が±10〜20bpmと大きく、そのまま信じると危険だ。同じ40歳でも、実際の最大心拍が175bpmの人もいれば195bpmの人もいる。「220−年齢」で出した数字でゾーンを組むと、人によっては全部きつすぎ・ゆるすぎになる。正確なゾーンを組みたいなら、インターバルやレースで実際に出た最高値を最大心拍として使ってほしい。GPSウォッチがあれば、何度か追い込むうちに自動で実測値に更新されていく。

Q. 心拍が上がりすぎて怖い。危険なラインはある?

健康な人であれば、インターバルやラストスパートで一時的に最大心拍の近くまで上がること自体は、基本的に問題ない。体が頑張っている証拠だ。ただし胸の痛み・強いめまい・吐き気・脈が不規則に乱れるといった症状を伴うときは話が別で、すぐに運動を中止してほしい。繰り返すなら必ず医療機関を受診すること。また、安静にしていても心拍がいつもより異常に高い日は、発熱や強い疲労のサインのこともある。数字より、まず自分の体の声を優先してほしい。

Q. ダイエット目的なら「脂肪燃焼ゾーン」を狙うべき?

これはよくある誤解だ。確かに低強度(脂肪燃焼ゾーンと呼ばれる有酸素持久ゾーンあたり)は、消費エネルギーに占める脂肪の「割合」が高い。だが痩せるために大事なのは割合ではなく「合計でどれだけ消費したか」だ。強度を上げたほうが総消費カロリーは大きくなるし、運動後も代謝が高い状態が続く。結論としては、脂肪燃焼ゾーンに縛られる必要はない。長く続けられる強度で、トータルの運動量を増やすことのほうがずっと効く。

Q. レース本番で、心拍を見ながら走るのは現実的?

全部を心拍で管理しようとすると、かえって走りに集中できなくなる。おすすめは序盤だけ心拍を「上限アラート」として使う方法だ。スタート直後はアドレナリンで暴走しやすいので、最初の3〜5kmだけ「この心拍を超えたら抑える」というブレーキ役に使う。中盤以降は体が温まって感覚も正確になるので、心拍はチラ見程度にして、体感とペースをメインに切り替えていい。心拍は“スタートの暴走を止めるための保険”、と割り切るのが実戦的だ。

Q. 心拍トレーニングは、どれくらいで効果が出る?

個人差はあるが、早ければ数週間で「同じペースなのに心拍が下がる」という変化が見え始める。これは心臓が1回でより多くの血液を送れるようになった、つまり持久力が育ってきた何よりのサインだ。さらに続けると安静時心拍が下がっていく。ぼくの安静時50bpmも、何年もの積み重ねの結果だ。心拍という物差しがあると、こうした成長が数字でハッキリ見えるので、モチベーションが続きやすいのも大きなメリットだ。

まとめ

ペースは目に見える結果、心拍は目に見えない負担。練習で心拍ゾーンの体感を身体に刻み、本番では序盤の暴走を抑える。これがぼくがCOROSのデータと向き合って辿り着いた、後半に崩れないための答えだ。タイムが伸び悩んでいる人ほど、一度ペースの物差しを置いて、心拍という物差しで自分の走りを見直してみてほしい。

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