ハーフマラソン85分の壁を、越えた。
2026年5月17日、ノーザンホースパークマラソン。1時間24分43秒(公式記録)。3月から積み上げてきた約11週間の練習が、レースの4’00″/kmというペースにそのまま出た。

この記事では、実際にサブ85を達成した練習メニューをCOROS(ランニングウォッチ)のデータとともに公開します。「何をやればいいのかわからない」「90分は切れたけど85分の壁が厚い」——そんな人に届けたい内容です。
- ハーフ85分切りに必要なペースと練習の考え方
- 週間スケジュールの実例(月〜日の組み方)
- 3ヶ月で実施した練習メニューの全容
- COROSを使ったトレーニング管理の方法
まず「85分切り」に必要なペースを分解する
ハーフマラソンの距離は21.0975km。85分で割ると、必要な平均ペースは——
(21.0975km ÷ 85分 = 4’02.2″/km)
キロ4分ちょうどのペースで走れれば、グロスタイムの誤差を考慮しても十分に85分以内に収まる。つまり練習の目標は、「4’00″〜4’05″/kmを21km維持できる体を作る」こと。
ここで重要なのは、「キロ4分で走る練習をすればいい」ではないという点だ。レースで4’00″を出すには、練習で4’20″〜4’30″を余裕を持って走れるようにならなければいけない。それがテンポ走・インターバルの役割だ。
サブ85を支えた「練習の3本柱」
約11週間の練習を振り返ると、構造はシンプルだった。
毎日5km
有酸素ベース維持
週1回・10km前後
スピード耐性を作る
週1回・10〜11km
閾値ペースを上げる
これに週1回のロング走(17〜27km)を加えた4種類が、練習の全てといっても過言ではない。特別なメニューは何もない。ただしそれぞれの役割が明確で、週ごとに積み上げていった。
柱① 毎日5kmイージーラン|有酸素ベースの下支え
「昼ラン」と名付けて毎日走っていたのが、5km前後のイージーラン。ペースは4’45″〜5’05″。心拍はリカバリー〜有酸素持久ゾーン(138〜156bpm)。走り終わってもほとんど疲れない強度だ。
役割は「有酸素エンジンの維持」。これがあるから週1のインターバルやテンポ走の質が上がる。毎日走ることで積み上がる週間走行距離が、じわじわとVO2maxの底上げにつながっていく。
- 会話できるペース(4’50″前後)が目安
- 心拍が上がりすぎたらペースを落とす。強度は「楽」が正解
- 距離は5kmで固定。これ以上増やしても回復に影響が出る
- リカバリー状態が80%未満なら休養か3kmに短縮
柱② インターバル走|スピード耐性を体に刻む
週1回、10km前後のインターバル走を実施。具体的には1kmを速いペースで走り、つなぎをジョグで回復するという繰り返し。平均ペースのログを見ると、3月は4’43″〜4’59″から始まり、4月には4’30″台まで向上した。
インターバルの目的は「速いペースへの耐性を作ること」。4’00″で21km走るためには、4’00″というペースが「きつい」ではなく「やや頑張っている」くらいの感覚に変換されなければいけない。そのための神経系・筋力の適応がインターバルで生まれる。
| 時期 | メニュー | インターバルペース | 状態 |
|---|---|---|---|
| 3月 | 1km×3本(レスト400m) | 3’51″〜3’55” | まずはペース慣れ |
| 4月前半 | 1km×3本(レスト400m) | 3’50″〜3’51” | ペースが安定してくる |
| 4月中旬〜後半 | 1km×4本(レスト400m) | 3’42″〜3’53” | 本数を増やして強化 |
| 5月(大会前) | 1km×3本(レスト400m) | 3’51″〜3’52” | 調整・維持 |
※ ペースはCOROSの「ラン」ラップ実測値。インターバル・テンポ走とも前後に軽ジョグでW-up(約15分)+クールダウン(約10分)を実施。レスト400mはウォーキング〜ゆっくりジョグ(5’00″〜5’30″/km程度)。
柱③ テンポ走|閾値ペースを4’20″台まで引き上げる
テンポ走は練習メニューの中で最も重要な位置づけだ。閾値ペース(乳酸が急激に蓄積し始める手前のペース)で10〜11kmを走り続ける練習。このペースが向上することが、レースペースの余裕に直結する。
テンポ走ペースの推移
※ 前後の軽ジョグ(W-up・クールダウン)を除いたテンポ区間の実ペース
3月に4’39″だったテンポが、4月には4’19″まで伸びた。「練習で4’20″を余裕を持って走れるようになれば、レースで4’00″は出る」——この感覚がレース当日に的中した。
COROSのペースゾーン「閾値(03’49″〜04’09″/km)」の遅い側が最初の目安。きつくなりすぎず、楽すぎない強度を心拍150〜165bpmで維持する。
慣れてきたら閾値の速い側を狙う。週ごとに5秒ずつ縮めるイメージで進める。

実際の週間スケジュール(COROSデータから再現)
実際のCOROSログをもとに、典型的な1週間のパターンを再現する。
| 曜日 | メニュー | 距離 | ペース目安 | TL目安 |
|---|---|---|---|---|
| 月 | 昼ラン(イージー) | 5km | 4’50″前後 | 40〜55 |
| 火 | 昼ラン(イージー) | 5km | 4’50″前後 | 40〜55 |
| 水 | インターバル走 | 10km | 平均4’30″〜4’45” | 150〜185 |
| 木 | 昼ラン(イージー) | 5km | 4’50″前後 | 40〜55 |
| 金 | テンポ走 | 10〜11km | 4’00″〜4’10″(テンポ区間) | 150〜200 |
| 土 | 軽ジョグ or 休養 | 5km or 0 | 5’00″以上 | 〜75 |
| 日 | ロング走 / LSD | 20〜27km | 4’47″〜5’37” | 200〜300 |
COROSが自動計算する「1回の練習の総負荷量」。距離・ペース・心拍数を組み合わせた指標で、同じ5kmでもゆっくり走れば低く、速く走れば高くなる。目安として、イージーラン5kmは40〜55、テンポ走10kmは150〜200、ロング走25kmは250〜300程度。
週間走行距離は50〜65km前後。TLの合計は週700〜800程度。「量が多すぎる」と感じる人は、昼ランを週2〜3回に減らすところから始めてほしい。核心はインターバル・テンポ・ロングの3本。これだけは削らない。
なぜハーフなのに27km走るのか
練習ログを見ると、ロング走の最長距離は27.45km(4月25日)。ハーフは21kmなのに、なぜそれ以上走るのか?
理由は2つある。
① 後半の粘りを作るため
ハーフの後半(15〜21km)が苦しくなる最大の原因は「筋グリコーゲンの枯渇」と「筋疲労」。25〜27kmのロング走を繰り返すことで、これらに対する耐性が生まれ、後半の失速が減る。
② 精神的な余裕が生まれるため
「27km走ったことがある」という事実が、21kmの後半に「まだいける」という根拠になる。根拠のある自信は、根拠のない気合いより強い。
ただし、ロング走はペースを上げない。5’00″前後でじっくり2時間走ることが目的だ。ゆっくり走ることで、有酸素系エネルギーシステムを長時間稼働させる適応が起きる。「遅いペースで走っても意味がない」は大きな誤解で、このゆっくりが後半の粘りを作る。
3ヶ月の練習フェーズと強度の進め方
11週間の練習は3つのフェーズに分けて進んだ。
Phase 1(3月):ベース構築
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| テンポ走ペース(テンポ区間) | 4’01″〜4’07″/km |
| インターバル avg | 4’43″〜4’59″/km |
| ロング走距離 | 21〜25km @ 5’05″前後 |
| 週間走行距離 | 50〜55km |
まず「走れる体」を作る段階。テンポもインターバルも無理せず、ロング走25kmを「完走する」ことを最優先にした。この時期にキロ5’05″のロング走でもきつく感じるなら、それが今の実力。焦らない。
Phase 2(4月):強度アップ
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| テンポ走ペース(テンポ区間) | 3’58″〜4’08″/km(最速3’58″) |
| インターバル avg | 4’30″〜4’35″/km |
| ロング走距離 | 26〜27km @ 4’47″〜5’07” |
| 週間走行距離 | 55〜65km |
ここが最も重要な時期。テンポ走のペースが4’30″台から4’20″台に突入し、ロング走の距離が27kmに達した。ここで体が変わる実感が出てくる。スピードが出やすくなる・テンポ走後の疲労感が減るといった変化が目安だ。
- テンポ走を週1→週1.5回に増やす(隔週で2回週を作る)
- ロング走の距離を26〜27kmまで伸ばす
- ミドル走(17〜18km @ 4’50″)を月1〜2回追加する
Phase 3(5月:大会3週前〜):テーパリング
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| テンポ走ペース(テンポ区間) | 4’07″/km(最終確認) |
| ロング走 | 大会3週前25km→2週前20km→1週前なし |
| 週間走行距離 | 50km→40km→30km |
| 大会1週前 | 5kmイージー中心、最終テンポ7kmのみ |
テーパリングは「休むこと」ではなく「積み上げた練習を体に定着させる期間」。距離を落としても強度(ペース)はそのまま維持する。いきなりガクンと減らすのではなく、3週かけてじわじわ落とすのがポイントだ。
COROSを使ったトレーニング管理法
練習メニューと同じくらい重要なのが、「やりすぎないこと」だ。その管理にCOROS(ランニングウォッチ)のデータを活用した。
① リカバリー率で翌日の練習強度を決める
COROSは毎日「リカバリー率(%)」を表示してくれる。この数値を練習強度の判断基準に使った。
| リカバリー率 | 翌日の練習 |
|---|---|
| 100% | インターバルまたはテンポ走OK |
| 85〜99% | イージーラン(5km)に留める |
| 80%未満 | 休養またはウォーキング |
特にインターバルやテンポの翌日はリカバリーが下がる。「もう走れる気がするから走ろう」ではなく、データが示す状態に従う。これがオーバートレーニングを防ぐ最大の武器だ。
② TL(トレーニング負荷)で週の積み上げを管理
COROS が計算してくれるTL(トレーニングロード)は、距離・ペース・心拍を合算したトレーニングの「総量」の指標。週のTL合計を記録することで、「今週は追い込みすぎた」「もう少し積めた」が数値でわかる。
- イージーラン5km×3〜4回:150〜220TL
- インターバル週1:150〜185TL
- テンポ走週1:150〜200TL
- ロング走週1:200〜300TL
- 週合計:650〜905TL
③ ランニングレベルの推移でフィットネス向上を確認
COROSの「ランニングレベル」は、VO2max相当の推定値。練習が積み上がるにつれてこの数値が上がっていく。レース直前のランニングレベルは92.7。3月の開始時と比較するとじわじわ上昇していた。「今の練習は正しい方向に向かっているか」の羅針盤として使える。

まとめ:85分の壁を越えるためにやるべきこと
11週間の練習を一言でまとめるなら、「シンプルなメニューを、誠実に積み重ねただけ」だ。
- 毎日5kmのイージーランで有酸素ベースを維持する
- 週1インターバルでスピード耐性を作る
- 週1テンポ走で閾値ペースを4’20″台まで上げる
- ロング走は25〜27kmまで伸ばす(ペースはゆっくりでOK)
- COROSのリカバリーを守ってオーバートレーニングを防ぐ
特別なことは何もない。ただ、「なぜそのメニューをやるのか」を理解して淡々と続けること——それだけで85分の壁は越えられる。
次のターゲットは80分切り(サブ80)。必要な平均ペースはキロ3’47″。また積み上げ直していく。


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