速くなることだけを考えていた時期があった。距離を伸ばして、ペースを上げて、強度を足していく。でもある日、そっちよりもずっと難しい問いが浮かんできた。
「このまま走り続けられるのか?」
膝に棚障害を抱え、前の冬は完全休養を余儀なくされた。凍結路面で転倒しかけた夜もある。走ることへの執着は変わらないのに、体がついてこない瞬間が増えてきた。そんなタイミングで手に取ったのが『60歳からのフルマラソン』だった。

なぜ40代のぼくがこの本を読んだのか
自分はまだ40歳で、ハーフマラソン1時間25分切りを目標にしている。本来なら「もっと速くなるための本」を選ぶべきかもしれない。でも、あえてこの本を読もうと思った。
速くなることよりも、走り続けることの方が難しいと感じ始めているからだ。冬の凍結路面でペースを落とした日、調子が良くても攻めるのをやめた日——最近の自分の判断は、記録を狙うためではなく、走り続けるためのものに変わりつつある。
この本の著者・堀口茂氏は60歳からフルマラソンを走り始め、継続していくなかで培ってきた考え方をまとめたもの。「年齢の話」というより、「長く走るための哲学」として読める。40歳のぼくにとっても、まったく無関係な話ではなかった。
気づき①|記録は数値より「判断」を残すためにある
本の中で特に印象的だったのは、日々の練習記録の残し方だ。著者はただのログではなく、その日の体調・判断・結果まで書き留めているという。距離やペースを管理するためではなく、「どう走るべきか」を学ぶための記録だ。
自分も日々の練習を記録しているが、そこに残すべきものは数値だけではないと改めて感じた。たとえば、
- なぜペースを落としたのか
- なぜ距離を踏まなかったのか
- なぜLSDに切り替えたのか
こういった「その日の判断」を残しておくと、未来の自分が同じ状況に直面したときの判断材料になる。記録とは、判断のストックを増やす行為だ。長く走り続けるためには、その場の頑張りよりも、過去の判断の積み重ねの方が重要なのかもしれない。
CORSのデータを振り返ると、調子が良かった週と悪かった週の違いが数値に出ている。でもその数値だけ見ても「なぜそうなったか」はわからない。言語化して残しておくことの価値を、この本を読んで改めて意識した。
気づき②|メニューに固執しない。その日に合わせる柔軟さが継続を守る
もう一つ刺さったのは、不調やケガがあったときの対処法だ。著者は「無理をしない」のではなく、「その日の状態に合わせて練習内容を変える」という姿勢を一貫させている。予定したメニューに固執せず、その日にできる最適な負荷に調整する。
これは「逃げ」ではなく、長く走るための戦略だ。自分自身も、凍結路面でペースを落としたり、膝に違和感を感じた日に距離を短くしたりすることがある。以前は予定通りにこなせなかった日を「弱さ」のように捉えていた部分があった。
でも今は違う。その日の状態に合わせて練習を変えることは、継続を守るための判断だ。無理をしないのではなく、その日に適した形に変える。それが積み重なって、走り続けることにつながっていく。この本を通じて、腑に落ちた。
棚障害で丸ごと一冬を失った自分には、特に響く話だった。あのとき少しでも「その日にできる形」に変えていたら、あそこまで悪化させずに済んだかもしれない。→ 棚障害で一冬を棒に振った記録
気づき③|「やめない」が最大のトレーニングだ
60歳から走り始めた著者が体現しているのは、スタート地点の話ではない。それよりも、「走ることをやめなかった」という事実の重さだ。
ランニングを続けていると、やめる理由は無限に出てくる。天気・仕事・体調・モチベーション。でも著者は、やめない理由を積み重ねることで走り続けてきた。その積み重ねが、60代でのフルマラソン完走という結果につながっている。
40代のぼくが今やるべきことも、結局は同じだと思う。速くなるための工夫は大切だ。でもそれ以上に、走ることをやめない判断を積み重ねることが、10年後・20年後の自分を作る。この本はそれをシンプルに教えてくれた。
こんな人に読んでほしい
- ケガや不調で「このまま走り続けられるか」と不安になったことがある人
- 記録を追うより「長く走ること」に価値を感じ始めている人
- 40代以降で、体力の限界を感じながらも走り続けたいと思っている人
- 練習記録をただの数値ログで終わらせている人
まとめ
速くなることを目指すと、練習は自然と「足し算」になる。距離を伸ばす、強度を上げる、回数を増やす。でも長く走り続けるためには、足すこと以上に「変える判断」が重要なのかもしれない。
記録を通じて判断を蓄積すること。不調の日はメニューを変えて継続を守ること。そしてやめない選択を積み重ねること。この3つは、速さを追うことと矛盾しない。むしろ走り続けることを優先した結果として、速さがついてくる——そういう順番があると感じた。
『60歳からのフルマラソン』というタイトルに距離感を覚える人もいるかもしれない。でも中身は年齢に関係なく刺さる話だ。「どうすれば走り続けられるか」を考えたことがあるランナーなら、手に取って損はない一冊だと思う。
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