ランニングのケイデンス(ピッチ)とは?目安の180spmと平均値を、40代ランナーのCOROS実測で検証

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「ケイデンスって何?」「180spmが目標らしいけど、自分はどのくらい?」

ランニングを続けていると、いつかぶつかる疑問だ。

COROS Pace4 を使い始めてから約2ヶ月、毎回のランをデータで記録してきた。最初は「なんとなく速い方がいいんだろ?」くらいの認識だったケイデンスが、データを見ていくうちに走るペース・疲労度・ケガリスクとの相関が見えてきた。今回は実録データを包み隠さず公開しながら、ケイデンスについて解説する。

📋 この記事でわかること:ケイデンスの定義と理想値 / COROS実測データ(練習種目別) / ケイデンスとケガの関係 / ケイデンスを上げる具体的な練習法

目次

ケイデンス(ピッチ)とは何か

ケイデンスとは、1分間に足が地面に接地する回数(歩数)のこと。単位は「spm(steps per minute)」で表される。ケイデンス 180spm とは、1分間に左右合わせて 180 歩(片足90歩)着地するペースだ。

ケイデンスとピッチは同じものか|呼び方が違うだけ

先に用語を整理しておく。ランニングでは「ケイデンス」も「ピッチ」も同じものを指す。1分間の歩数のことだ。

呼び方使われる場面
ピッチ日本語の会話や雑誌。「ピッチ走法」「ピッチを上げる」
ケイデンスGPSウォッチやアプリの表示。COROS・ガーミンはこの表記
spm単位。steps per minute(1分あたりの歩数)

ただし自転車の「ケイデンス」は別物だ。あちらはペダルの回転数(rpm)を指す。検索していて自転車の記事が混ざるのはそのためだ。

数え方にも注意がいる。ランニングのspmは左右を合わせた歩数で数える。180spmなら片足は90歩だ。片足で数えた数字と比べると、倍ちがう。

「180spm」が理想と言われる理由

スポーツ科学者ジャック・ダニエルズ博士が 1984 年のロサンゼルス五輪で調査したところ、トップランナーのほぼ全員が 180spm 以上だったことが判明した。それ以降、180spm = ランニングの理想ケイデンスという指標が定着している。

  • 180spm 未満 → ストライドが大きすぎる可能性。着地衝撃が増大しやすい
  • 180〜190spm → 効率的な接地が可能な理想ゾーン
  • 190spm 以上 → 速いペース時に自然に到達する領域

ケイデンスとストライドの関係

スピードは「ケイデンス × ストライド(歩幅)」で決まる。同じスピードを出すなら、ケイデンスを上げると歩幅が小さくなり接地衝撃が下がる。ストライドを伸ばすと歩幅が大きくなり脚への負担が増す。初心者や市民ランナーがケガをしやすい原因の一つが「オーバーストライド(歩幅を取りすぎる)」だ。ケイデンスを意識することで、自然とこれを防げる。

ケイデンス比較図:160spmのオーバーストライド(NG)と180spmの理想フォーム(OK)
左:オーバーストライド(160spm)→ 膝への衝撃大。右:理想ケイデンス(180spm)→ 効率的な着地

ケイデンスとケガの関係

ランニング障害の研究では、ケイデンスを 10% 上げると膝への負荷が約 14% 減少するという報告がある(Heiderscheit et al., 2011)。私自身、去年は腸脛靭帯炎(ランナー膝)を経験した。当時を振り返ると、「速く走ろうとして歩幅を広げる→踵から着地する→膝で衝撃を受ける」という悪循環にはまっていたと思う。COROS でケイデンスを計測し始めてからは意識が変わり、歩幅ではなく回転数でスピードを出す感覚が身についた。膝への負担が体感でわかるほど変わった。

ケイデンスを10%上げると膝への負荷が約14%減少する
ケイデンスを10%上げると膝への負荷が約14%減少する

COROS Pace4 で記録した実測ケイデンスデータ

2026年4月〜5月に COROS Pace4 で記録した実際のデータを公開する。COROS Training Hub から抽出したリアルな数字だ。

日付練習内容距離平均ペース平均ケイデンス
5/15テンポ走(大会前)7.0km4分30秒/km184spm
5/14昼ラン(通常)5.1km4分40秒/km181spm
5/13昼ラン(通常)5.1km4分42秒/km181spm
5/13インターバル走7.6km4分33秒/km180spm
5/11ロング走15.8km4分11秒/km186spm
5/9ジョグ7.3km4分50秒/km183spm
5/7軽ジョグ10.0km4分57秒/km187spm
5/5ロング走20.3km4分48秒/km184spm
5/3テンポ走15.1km4分30秒/km187spm
5/1ロング走25.1km5分00秒/km186spm
4/30ランニングレベルテスト12.1km4分31秒/km186spm
4/29テンポ走11.5km4分40秒/km188spm
4/28快調走(昼ラン)5.1km4分24秒/km196spm
4/27回復ジョグ5.1km4分44秒/km179spm
4/25ロング走27.5km4分52秒/km185spm

データを見て気づいたこと

① ペースに関係なくケイデンスが安定している

5分00秒/km のロング走から 4分24秒/km の快調走まで、ケイデンスの幅は 179〜196spm。ペースの幅に比べてかなり狭い範囲に収まっている。スピードを上げるとき、テンポ走以上のペースになるとケイデンスが自然に高くなる傾向がある。

② 最もケイデンスが高いのは「快調走」

4/28 の快調走(4分24秒/km)では 196spm に達した。このとき「軽くて弾む感覚」がはっきりあった。足裏からの反発を推進力に変換できているからだと感じた。

③ 回復走でケイデンスが落ちた

4/27 の回復ジョグ(4分44秒/km)では 179spm。意識的に「ゆっくり走ろう」としてストライドを縮めたところ、回転数も下がってしまった。回復走はペースを落としつつも 180spm 前後のケイデンスを維持するのが理想とされる。この点は今後の改善ポイントだ。

💡 つまりこういうこと:ケイデンスはペースよりも「フォームの質」を反映する指標だ。速くても遅くても 180spm 前後を維持できているなら、効率的なフォームが身についているサインといえる。

ケイデンスを上げる練習法3つ

ケイデンスを上げる練習法3つ:メトロノーム・インターバル・坂道ダッシュ
ケイデンスを上げる3つの練習法:①メトロノーム ②ショートインターバル ③坂道ダッシュ

「180spm が目標」とわかっても、いきなり上げようとすると不自然で疲れる。段階的に取り組む方法を紹介する。

① メトロノームアプリを使う

無料のメトロノームアプリを 180bpm に設定し、そのリズムに合わせて走る。最初は違和感があるが、1〜2週間で体が慣れてくる。まず今の自分のケイデンスを計測し、そこから 5spm 刻みで上げていくのが無理のないやり方だ。

② ショートインターバルでリズムを覚える

100〜200m を高ケイデンスで走り、ゆっくりジョグで戻る繰り返し。「速い回転数」の感覚を体に覚えさせる練習だ。ポイントは「速く走る」ではなく「素早く足を動かす」意識。スピードより回転にフォーカスする。

③ 坂道ダッシュ(上り坂)

上り坂を走ると自然にストライドが短くなり、ケイデンスが上がりやすい。フォーム改善と脚力強化を同時に狙える練習だ。週1回、5〜8% の緩やかな坂で 100m × 8本 程度から始めてみよう。

こんな人はケイデンスを確認してほしい

  • 膝の外側・内側が痛くなることがある(腸脛靭帯炎・ランナー膝の疑い)
  • 着地のとき「ドンドン」という音がする(踵着地・オーバーストライドの可能性)
  • ゆっくり走るのに疲れやすい(非効率なフォームになっている可能性)
  • GPS ウォッチを使っているが、ケイデンスを確認したことがない

COROS・Garmin・Apple Watch などほとんどの GPS ウォッチにはケイデンス計測機能がある。まずは1週間分のデータを振り返るだけでいい。

【2026年9月 追記】4ヶ月ぶんのデータで、答えが変わった

この記事を最初に書いたのは2026年5月。COROS PACE 4 を使い始めて2ヶ月の時点だった。

あれから4ヶ月走って、レースも3本走った。ペース別のデータが揃ったので、当時は見えていなかったことを書き足す。

ペース別の実測|ジョグからインターバルまで

ペース別のケイデンスとストライドの実測グラフ
レースペースの範囲では、ケイデンスはほとんど動いていない
練習・レースペースケイデンスストライド
ジョグ5分47秒/km170 spm101 cm
ジョグ5分17秒/km167 spm113 cm
ミドル走4分40秒/km177 spm122 cm
ハーフマラソン4分01秒/km183 spm136 cm
ハーフマラソン(自己ベスト)3分57秒/km183 spm139 cm
10kmレース(自己ベスト)3分42秒/km184 spm147 cm
インターバル 1km3分33秒/km197 spm143 cm

レースペースでは、ケイデンスは動かなかった

表の真ん中3行を見てほしい。

4分01秒/km → 183 spm/136cm
3分57秒/km → 183 spm/139cm
3分42秒/km → 184 spm/147cm

19秒/kmも速くなっているのに、ケイデンスは183から184へ1しか動いていない。代わりにストライドが136cmから147cmへ11cm伸びている。

つまりレースのペースを決めていたのは、ケイデンスではなくストライドだった。

ジョグからレースペースまでの区間では、ケイデンスもきちんと上がっている(167→184)。上がらなくなるのは、レースペースに入ってからだ。ここが最初に書いたときには見えていなかった。

ジョギングのケイデンスは170前後でいい

「180spmを目指せ」と言われると、ジョグでも180を出そうとしてしまう。私のジョグは167〜177だった。

ゆっくり走るのに歩数だけ多いと、歩幅が異常に狭くなる。5分47秒/kmのときのストライドは101cm。これ以上ピッチを上げると、その場で足踏みしているのに近くなる。

ジョグは170前後で構わない。180を意識するのはレースペースの練習だけでいい、というのが4ヶ月後の結論だ。

160spmでも問題ないのか

結論から言えば、160spmそのものが悪いわけではない。

問題になるのはケイデンスが低いままストライドで速く走ろうとしたときだ。歩幅を広げると重心より前で着地しやすくなり、そのぶんブレーキと衝撃が増える。

だから見るべきなのは数字そのものではなく、「そのペースで、その歩幅か」という組み合わせになる。ジョグで160spm・ストライド100cm前後なら、何もおかしくない。

身長でも変わる。私は181cmある。同じペースなら背の低い人のほうがケイデンスは高く出る。他人の数字と直接比べる意味はあまりない。

フルマラソンでは、ケイデンスはどうなるのか

42.195kmを走ったときのデータもある。2025年8月の北海道マラソン、3時間36分35秒のときの記録だ。

区間平均ケイデンス平均ストライド平均ペース
2〜24km179 spm128 cm4分22秒/km
25〜42km165 spm103 cm6分04秒/km
変化−8%−19%1分42秒 遅い

ケイデンスは8%しか落ちていないのに、ストライドは19%落ちている。落ち込みの幅が2倍以上ちがう。

一番ひどかった38kmのラップは、ケイデンス158・ストライド64cm。これは走っている数字ではない。歩いていた。

フルマラソンで先に壊れるのは、ケイデンスではなくストライドだった。脚の回転はそこそこ保てていて、一歩の長さだけが縮んでいく。

だから後半にケイデンスが保てているかどうかは、あまり良い指標にならない。同じピッチのまま歩幅だけ縮んで、じわじわ遅くなる。時計のケイデンス表示だけを見ていると、それに気づけない。

ストライドも一緒に見る。これがフルマラソンで学んだことだ。

まとめ:数字で自分のフォームを「見える化」する

ケイデンスは難しいものではない。「1分間に何歩動かすか」という、シンプルな指標だ。

COROS で記録し続けることで 自分の走りのクセと改善の方向性が見えるようになった。テンポ走では 184〜188spm を維持できているが、回復ジョグでの 179spm は今後改善していきたいポイントだ。

大切なのは「理想の 180spm に合わせること」ではなく、継続して計測し、変化を追いかけること。走るたびにデータが積み上がり、自分だけのランニングカルテができていく。GPS ウォッチを持っている人は、次の走行後にケイデンスの欄を一度チェックしてみてほしい。

ここで紹介した実測データはすべて COROS PACE 4(カロス ペース4)で記録したもの。ケイデンスは対応したGPSウォッチがあれば自動で記録される。

🏃 ランニングをもっと速くしたい人へ:マラソンの心拍管理|練習ペース完全整理(E・M・T・I・R)

あわせて読みたい

このピッチの数字を、フルマラソンで見るとどうなるか。2025年の北海道マラソンで25km以降に崩れたとき、落ちていたのはピッチではなくストライドだった。全42kmのラップを1kmずつ開いた記事がこちら。

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