「Eペース」「Iペース」「Tペース」……ランニングの練習記事を読んでいると、アルファベットだらけで何が何やらわからなくなる。
走り始めた頃の自分もそうだった。インターバル走の記事を読んでいるのに「これIペースでやれ」と書いてあって、Iペースが何かを調べたら「VDOTを調べろ」と書いてある。調べてみると数字の表が出てきて、余計に混乱した記憶がある。
この記事では、ランニングの練習で出てくるペース分類を一度で整理する。ジャック・ダニエルズのVDOT理論に基づいたE・M・T・I・Rの5種類+LSDを、目的・強度・使い場面まで噛み砕いて解説する。

そもそもVDOTとは何か
VDOT(V-dot-O2max)は、ランニングコーチのジャック・ダニエルズが考案した「今の自分の走力を示す数値」だ。VO₂max(最大酸素摂取量)を直接測定しなくても、レースタイムや練習ペースから逆算して算出できる。
この数値が決まると、各練習のペースが自動的に導き出される。つまりEペースもIペースも、「自分のVDOTに対して何%の強度で走るか」で定義されている。だから体重・年齢・性別に関係なく、VDOTさえわかれば自分専用の練習ペースが出せる。
VDOTはWebのVDOT計算機に最近のレースタイムを入れるだけで出てくる。ハーフ1時間25分を目標にしているなら、現時点の10kmタイムあたりを入れてみると実力ベースのVDOTが確認できる。(https://vdoto2.com/calculator)
練習ペース6種類を強度順に整理する
① Rペース(Repetition Pace)──神経系に刺激を入れる最速域
目的:ランニングエコノミー(RE)と神経系スピードの向上。
「レペティション」「レペ走」「神経系スピード走」とも呼ばれる。全力の90〜100%に近い強度で、200〜400mを完全回復してから繰り返す。心肺ではなく「動きの質」に刺激を入れるのが目的なので、インターバル走とは似て非なるものだ。
疲労が残っているとフォームが崩れて逆効果になるため、インターバルよりも長い休息(1〜2分以上)を取る。30〜90秒しか維持できない強度感が目安。「全力で走っているのにしんどくない」という不思議な感覚が正解に近い。
② Iペース(Interval Pace)──VO₂maxを鍛える心肺系の最強刺激
目的:VO₂max(最大酸素摂取量)の引き上げ。スピードの”天井”を上げる。
「VO₂maxインターバル」「インターバル走」「高強度インターバル」とも呼ばれる。最大心拍の90〜95%、3〜6分間維持できる限界に近いペース。苦しいけどフォームはギリ保てる、という強度感が正解に近い。
Rペースが「動きの質」ならIペースは「心肺の上限」を上げる練習だ。週1回以上やると疲労が蓄積しやすいため、量よりも「最大酸素摂取量が刺激される時間を稼ぐ」ことを意識して設計する。5kmレースに近い強度感だ。
③ Tペース(Threshold Pace)──乳酸を”処理できる速さ”を広げる
目的:LT(乳酸性作業閾値)を高め、「きつくないのに速い状態」の範囲を広げる。
「テンポ走」「閾値走(LT走)」「スレッショルド走」とも呼ばれる。20〜40分維持できる、「きついけど耐えられる」絶妙な強度。10kmからハーフマラソンの中間あたりの強度感だ。
乳酸は運動強度が上がると筋肉に蓄積されるが、Tペース付近でトレーニングすることで「乳酸を処理する能力」が高まる。ハーフマラソンの後半で失速しないためには、このTペースの底上げが最も効く練習だ。
④ Mペース(Marathon Pace)──レース本番を想定した中強度
目的:マラソン目標ペースでの走力を固める。エネルギー効率の最適化。
「マラソンペース走」「MP走」とも呼ばれる。フルマラソンの目標ペースで長距離を走る練習で、強度的にはTペースとEペースの間。会話はしにくいが、「苦しい」とまではいかない。
ハーフマラソンを目指す場合は、Mペースは少し余裕のある強度になる。長い距離でのペース感覚を養うという意味では、レース前の仕上げ練習として使いやすいペースだ。
⑤ Eペース(Easy Pace)──この強度で走る時間こそが基礎になる
目的:有酸素能力の基礎構築と疲労回復。
「イージーラン」「ジョグ」「会話できるペース」とも呼ばれる。最大心拍の60〜79%で、ゆっくり会話できるくらいの強度。「これで効果あるの?」と思うくらい楽に感じることもあるが、毎日走れる基盤を作るのはEペースの積み重ねだ。
月間走行距離を積めるのもEペースあってこそ。I・T・Rペースの練習は週1〜2回が限界だが、Eペースなら毎日でも続けられる。総練習時間の80%はEペースにすべき、という理論(80/20ルール)もある。
⑥ LSD(Long Slow Distance)──Eペースよりさらに遅く、長く
目的:脂肪燃焼能力と基礎持久力の向上。毛細血管の発達。
「ロングジョグ」「ゆっくり長く走る」とも呼ばれる。Eペースよりさらにゆっくり(会話が楽にできる)で、90〜180分走る。長い時間体を動かし続けることで、遅筋繊維の強化と脂肪をエネルギーとして使う能力を高める。
ハーフマラソン以上の距離を目指すときは、月1〜2回のLSDを入れると長い距離への耐性が養われる。脚への負担は少ないが、時間がかかるのが難点。
一目でわかる比較表
| 種類 | 強度感 | 目的 | 維持できる時間 | 頻度目安 |
|---|---|---|---|---|
| R(レペ) | 全力の90〜100% | 神経系・RE向上 | 30〜90秒 | 週1回 |
| I(インターバル) | 最大心拍90〜95% | VO₂max向上 | 3〜6分 | 週1回 |
| T(テンポ) | きついが耐えられる | LT向上 | 20〜40分 | 週1〜2回 |
| M(マラソン) | やや余裕あり | レースペース定着 | 60〜90分 | 週1〜2回 |
| E(イージー) | 会話できる | 基礎・回復 | 何時間でも | 毎日OK |
| LSD | Eより遅い | 基礎持久力 | 90〜180分 | 月1〜2回 |
ハーフ1時間25分(VDOT≈53)を目指す場合の目安ペース
自分がちょうど目指しているハーフ1:25(VDOT53あたり)の場合、各ペースはだいたい以下のイメージになる。
| 練習種類 | 目安ペース | 心拍の感覚 |
|---|---|---|
| Rペース | 3’40〜3’50/km | ほぼ全力 |
| Iペース | 3’55〜4’05/km | ゼーゼーしてるが耐えられる |
| Tペース | 4’15〜4’25/km | きついが会話は無理 |
| Mペース | 4’40〜4’50/km | 少し余裕、呼吸はある |
| Eペース | 5’10〜5’40/km | 楽に話せる |
| LSD | 5’40〜6’00/km以上 | 完全にゆっくり |
※ VDOTは公式計算機で自分のレースタイムから確認を。数値は個人差あり。
まとめ:ペースに迷ったときのシンプルな指針
練習ペースの分類は覚えることが多く見えるが、実は「速い順にR・I・T・M・E・LSD」という並びで理解するとシンプルだ。
- 速くなりたい・フォームを磨きたい → Rペース
- 心肺の上限を上げたい → Iペース
- 後半の失速を減らしたい → Tペース
- レース感覚を養いたい → Mペース
- とにかく距離を積みたい・疲労を抜きたい → Eペース
- ロングレースの耐性をつけたい → LSD
ハーフマラソンを目指す段階では、TペースとIペースを週1回ずつ、残りをEペースで積んでいくのが基本的な構成になる。完璧に全種類を使いこなす必要はなく、まず自分のVDOTを把握して、週1〜2本の質練習を入れるところから始めれば十分だ。
ペースに迷っていた時間が、少しでも短縮されれば幸いだ。
ペース管理はGPSウォッチに任せると練習が変わる

ペースの分類を頭で理解しても、実際に走りながら「今Eペースか、Tペースか」を感覚だけで判断するのは難しい。特に走り始めは、自分では「ゆっくり」と思っていてもEペースを大きく超えていることがよくある。
GPSウォッチをつければ、リアルタイムでペースと心拍数を確認できる。「このキツさがTペースの感覚」と体で覚えていくためにも、最初のうちは数字に頼ることが上達の近道だ。
自分が使っているのはCOROS Pace4。GPS精度が高く、バッテリーが長持ちで、ランニング特化の機能が揃っている。ハーフマラソンを目指すなら投資する価値は十分にある。
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